<3年前からアパートを売る人の相談が増加傾向>他
Ⅰ【 3年前からアパートを売る人の相談が増加傾向 】
少子・高齢化に伴って、高齢者所有の古くなったアパートを売買したいと考えている人が多くなって来た。一般的な発想としては、古いアパートを解体して新築や売却と考えられるが、その多くはその様に簡単にはいかない課題があります。それは入居者の理解を得ての退去がスムーズに進むか否かという課題です。
古いアパートに居住している方が高齢者であること、及び家賃が近隣の相場よりも低いことで、動きたくとも動けない事情があります。
また、法律「借地借家法」で借主が保護されている背景も大きな要因であります。
特に、売買する意向での立退き交渉のケースでは、借主との賃借権解約手続きがままならない可能性が高い様です。
まして裁判となると、なにも好んでその様なリスクのあるアパートを購入する人は少ない。
結論としては、借主との信頼関係の構築の有無にかかっての判断となる。
従って、空家住宅の増加傾向は否めない様です。
Ⅱ【 敷地が地上権や借地権又は借地借家法付きのマンション 】
某仲介業者が地上権付き(マンションの敷地の一部)マンションの売買仲介(A社)をした後に、同マンションを買った人(B)がCへ転売しようとした際に、別の不動産仲介業者から指摘を受けて紛争になった。
仲介業者(A)の言い分は、地上権が30年とありその期間が満了していたこと、及び当時の司法書士もその様に理解していたから今さら問題となるとは思わなかったとの主張。
問.法律での地上権は期間満了で消滅しますか?
答.マンションという「建物所有を目的」とする場合は、最短30年と民法265条(建物所有の目的は借地借家法第3条)に規定されています。
すなわち、建物所有を目的とするため他人の土地を使用する場合の権利を借地権と呼び、借地借家法の適用を受けます。
建物所有を目的とする地上権は、借地権の一種なのですが、「借りる」という単語から受ける印象よりも、土地に対して強い(物権法)の適用を受け、法的に所有権に次ぐ程強い権利(支配力)を持ちます。
けだし、地上権を持つ者が権利を放棄しない場合は、当事者の請求に基づいて裁判所は、20年から50年の間で定めます。
法律で地上権の存続期間について特に制限があるわけではありません。
標記のケースであれば、建物が存続している限りでは地上権の存続期間と解される。
従って、仲介業者(A)の契約不適合責任(品質又は数量に関して契約の内容に欠陥があるとき)が問われる可能性があります。
不動産の売買仲介業務には、法律の実体法を理解することがとても大切でありましょう。
業者自身が理解されない場合や良くわからない時は、法律の専門家に相談・助言を得るなどの慎重な対応が求められます。取引の安全のために。
Ⅲ【 藤原実方朝臣を偲ぶ 】
筆者は去る3月11日、宮城県名取市愛島塩手北野42の藤原実方朝臣(ふじわらのさねかたあそん)の墓を訪ねました。
実方は、平安時代のなかば(950年頃)京都の都で生まれ、皇室との縁も深い貴族で、美しい顔立ちだったため宮中の花形の貴公子として活躍しており、紫式部の「源氏物語」の主人公・光源氏のモデルとなったとも言われています。そのことは、NHK大河ドラマでの『光る君へ』(2024年1月7日~12月15日)で放送された、平安時代中期の貴族社会を舞台に世界最古の女性文学の「源氏物語」を執筆した紫式部の生涯を描いた中でも注目の的として書かれたのではないかと言われている。ところでなぜ実方は当地へ来たのか?
宮中の花見の席でにわか雨に降られた時に、他の参加者が慌てている中、実方は落ち着いた様子で桜の木の下で雨に濡れながら歌を詠んだ。
「さくらがり 雨は降り来(き)ぬ 同じくは ぬるとも花の 蔭にかくれむ」(下記、実方の句碑参照)
(訳.お花見に来たら雨が降って来た。どうせ濡れるなら花のかげに隠れて濡れよう)
しかし、実方とライバルにあった藤原行成は「歌は面白し、実方はをこなり」(歌はいいけれど、実方の振る舞いはばかばかしく思える)とあざわらったのです。
それを聞いて、実方は怒りにまかせ、行成の冠をたたき落とした。
これを見ていた一条天皇から「みちのくの歌枕を見てまゐ(い)れ」と言われて、陸奥の国司の仕事へ着く様に(左遷された、又は昇進に任命された=諸説あり)と言われ、職務を全うする一方、地方の歌枕を訪ねて回って、出羽国(山形県)を訪ねた帰りに、この愛島の地で落馬して地元の人々の手当ても虚しく998年11月13日にその生涯を終えました。
筆者もなんどもこの地を訪問して来ましたが、前記のとおり、NHK大河ドラマ「光る君へ」の放送により歴女らの来訪も毎日続いていたこともあってか、名取市は様々な人達から尊敬を集めた実方の墓に、「おくのほそ道」を辿るなど多くの歌人が訪ねています。その代表者らは、松尾芭蕉、正岡子規や西行法師、及びゆかりの歌人 清少納言、与謝蕪村らが実方の不遇の死を偲んで歌を詠まれています。それらの句碑等が新しく建立され整備されていた。(名取市商工観光課、尚絅学院大学制作資料など引用)
【写真左】実方橋
【写真中央】この砂利道の奥へ、多山の句碑や実方の墓へと続く
【写真右】実方 句碑(万葉仮名で刻まれている)
以上