民法の一部改正について Ⅱ
1.<民法一部改正と実務への影響>
前回5月号のレポートの引き続きを改正項目毎に検討して見たいと思います。民法の一部改正項目には前回の①保証人の保証債務の限度額の定め②敷金(預り金)の返還請求③原状回復について述べさせていただきました。今回は残りの④賃貸借物の修繕⑤転貸借(借主が第三者へ貸すこと)⑥賃借物の一部滅失等による賃料の減額⑦保証人からの請求による情報提供義務⑧期限の利益損失についての情報提供義務⑨不動産の賃借人による妨害排除等請求権のうち④⑤の二項目についてレポートします。
④「賃貸借物の修繕」
〔現行法〕
民法第606条に賃貸人(所有者)は賃借物の使用及び収益に必要な修繕をする義務があると定められています。(レンタカーに例えれば、車のタイヤ、オイル交換、車検、車両保険等はレンタカー会社の負担になること)
〔改正法〕現行法の末尾に以下の改正法が加わる。
(1)「ただし、賃借人の責に帰すべき事由によってその修繕が必要になった場合はこの限りではない。」(当然のことを明文化したものである。賃借人が壊したりした場合は賃借人の負担とのこと。)
(2)賃貸人が相当な期間内に必要な修繕権限を新設
ア. 賃貸人が相当な期間内に必要な修繕をしない場合。
イ. 急迫の事情があるとき。
賃借人の責に帰すべき事由によってその修繕が必要となった場合、賃貸人(所有者)は堂々と拒否できる。(これは通常の使用方法と異なり不法行為の損害賠償となるからであろう。)
問題は、賃借人の修繕権限が認められたことにより賃貸人として速やかに修繕をしないと勝手に修繕され、不相当な代金等を請求される恐れが出ます。また、どの程度で「急迫な事情があるとき」と言えるのか不明確でトラブルになる可能性がある。
⑤「転貸借」
原賃貸借契約(AとBとの間の契約のこと)がAとBとの間で合意解除された場合の転借人(C)の立場の定は現行法には無かった。
〔改正法〕
賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人には、転貸人との間の賃貸借契約を(A-B間で)合意により解除したことをもって転借人(C)に主張することが出来ない。
ただし、当該解除の当時転借人(C)の債務不履行(約束を守らない)により賃貸人(A)と転貸人(B)との間の賃貸借契約を解除することができたときは、この限りではない。
影響はありません。
これまでの判例が判示した文言を明文化されただけであり周知の事実であります。
2.<学生がアパート等を借りる場合のこだわりについて>
1)築年数20年以内と20年過ぎの成約率…男女共に築20年以内が40%築20年過ぎは約35%でし
た。(その他25%)〔大差はありませんが、清潔感があり防犯面に配慮してあり交通の便が良いところ。又、エアコンやウォシュレットは必須の様でした。〕
2)構造については男女共に木造が21人で鉄筋コンクリート造(RC)20人、鉄骨造7人〔木造とRCとも大差はありませんでした。〕
3)階数については、大差があり、女性は2階建以上の階数、男性は階数にこだわらず静かで勉強ができる環境があればとの考え方。
4)部屋の広さについては8帖以上の希望が多く、31人。6帖未満は15人。
5)賃料は…35,000円以下(5人)、35,000円(9人)、35,001~40,000円(6人)、40,001~45,000(10人)、45,001~50,000円(9人)、50,001~55,000円(7人)、55,001以上(2人)。
今年の平均家賃は、41,750円でした。因みに昨年は45,146円で今年は▲3,396円でした。これらは、賃料の設定にも留意しなければ学生(学生の親も含む)らの支持が受けられなくなる可能性もあると考えます。