●マンションの破産法に基づく任意売買と担保権者の権利侵害の有無について | 企業法務あれこれ

                       株式会社 杜リゾート

                     (不動産コンサルティング部)

 

 マンションの破産法に基づく任意売買と担保権者の権利侵害の有無について

 

*物件(以下「本件マンション」とする。)

  所在 仙台市太白区長町一丁目1-10(仮称)

  建物名称 長町一丁目マンション(仮称)

  専有部分の面積 10階部分(専有面積50㎡)

  敷地・建物 所有権(区分所有権)

*抵当権(以下、まとめて「本件抵当権」とする。)

  1番抵当権 昭和60年7月18日設定 平成20年4月1日承継

        抵当権者=(独)住宅金融支援機構 1060万円(以下「抵当権①」)

  2番抵当権 昭和60年5月14日保証の求償債務 1280万円

        抵当権者=不動産信用保証会社(以下「抵当権②」)

  いずれも共同抵当ではない。

 

【前提】

本稿では、本件マンションの任意売却と、その代価の処分につき、詐害行為取消(民法424条1項)のおそれと、破産手続き上の危険性の検討を行った。

 

第1 詐害行為取消しの対象該当性の検討

【結論】

・本件マンションの任意売却が詐害行為取消しの対象となることはない。

・売却代価の処分については、既存債権者への偏頗弁済や、極端な費消行為等をしない限り、

 詐害行為取消しの対象となることはない。

【検討】

(1)本件マンションの任意売却について

 本件抵当権設定時の抵当権被担保債権額(主たる債務の額1060万円)のうち、抵当権①の被担保債務については、これまでの弁済により、平成28年3月17日経過時点で845万2731円が弁済され、残債務が214万7269円となっているため、抵当権①による把握価値も同額分のみ残存していることとなる。

 また、抵当権②による被担保債権は、抵当権①の被担保債権の委託保証による求償債務である。したがって、抵当権②の設定時の1280万円から、主債務消滅分845万2731円を差し引いた434万7269円が抵当権②による把握価値である。よって、本件抵当権により把握されている本件マンションの価値は、抵当権①と抵当権②の被担保債権額のうち、多額である②の434万7269円である。

 本件マンションの任意売却によって、期待される売却価額は1220万円である。したがって、本件マンションには、抵当権によって把握されていない余剰価値が785万2731円分存在していることとなる。この分が一般債権者のための責任財産となる。

 詐害行為取消しとは、一般債権者の責任財産を減少させる行為(詐害行為)を取り消すものである。したがって、本件マンションの任意売却は、785万2731円分につき、この詐害行為に該当する可能性が存在する。

 もっとも、財産の相当価額での売却行為が詐害行為に当たるとされるのは、売却の目的や動機が不当である例外的な場合に限られる(*1)。本件マンションの任意売却は、相当な価額(1220万円)での売却であり、目的や動機に不当なものもないから、詐害行為に当たるとは考えられない。

 

(2)本件マンションの代価の処分について

 換価後の代価については、一般債権者のための責任財産となる(*2)ため、その処分は態様次第で詐害行為に該当し得る。

 詐害行為(民法424条1項)の該当要件は①主観的要件(債権者への害意)、②客観的要件(責任財産の全体価値の減少)であり、①と②は相関的に判断される(*3)。

 本件マンションの代価を、通常の態様で処分する分には、詐害行為に該当することはないと思われる。もっとも、通常の生活費以上に浪費したり、債権者を害する意図(害意)で特定の債権者と通謀してする弁済(*4)に回したりすれば、代価の処分自体が取消しの対象となり得る。なお、現在まで払い続けてきた本件マンションのローンの返済を継続することは、詐害行為に当らないと考えられる。

 

第2 破産手続における危険性の検討

【結論】

・本件マンションの任意売却が否認権行使の対象となる可能性は低い。

・売却代価の処分についても、偏頗弁済や極端な費消等をしなければ(*5)、否認権行使の対象

 とはならない。

・代価の費消によっても、免責不許可となる可能性は低い。

・適正価額での任意売却と代価の保管をすれば、本件マンションの任意売却と売却代価の処分に

 ついては、破産手続き上の問題が生じることはない。

【検討】

破産手続き開始後に本件マンションを任意売却した場合や、本件マンションの代価を処分した場合に、それらの行為が破産手続き上不利益となる可能性につき検討する。

(1)否認権の対象(破産法160条、161条)該当性

 否認権の行使とは、その行為の効力が破産財団のために否定されることである。

 (ア)詐害行為の否認(破産法160条)

   本件マンションの任意売却については、同法161条1項柱書により、原則として詐害性

   が否定される。(詳細は(イ)で検討する。)

   本件マンションの代価(金銭)の処分については、その処分態様が①詐害性があり②詐害

   意図があり③利益を受けた相手方が悪意であれば、否認の対象となる。現金である代価の

   処分につき、これらの要件が肯定されるのは、意図的な現金の移転や隠匿等例外的な場合

   のみであり、通常の費消行為がこれらに該当することは考えにくい。

   もっとも、現金の使途として、一部の債権者に対する弁済をする場合、支払い不能(同法

   2条11項)または破産手続き開始前後の時期以降の既存の債務に対する弁済行為等は、

   一定の場合(*6)に否認権行使の対象となるため(同法162条参照)、注意すべきである。

 (イ)適正価額売却の否認(破産法161条)

   本件マンションの任意売却が否認権行使の対象となるか検討する。

   同法161条2項3号により、親族への本件マンションの任意売却については、同条1項

   3号の悪意が推定されるため、同項1号と2号のいずれにも該当することが示されれば、

   本件マンションの任意売却は否認権行使の対象となるおそれがある。

   したがって、否認権行使を免れるためには、隠匿等の行為により破産債権者を害する現実

   の危険(1号)を生じさせないこと、または処分時に代価の隠匿等の意思を有しないこと

   (2号)のいずれかを満たしている必要がある。代価を債権者に明らかな形で保管するな

   どの措置が取られることが望ましい。

(2)免責不許可事由(破産法252条1号、4号)該当性

 免責不許可事由のうち、本件マンションの任意売却と代価の処分が該当する可能性があるの

 が、同法252条1項1号(財産減少行為)と同項4号(浪費行為)である。

 もっとも、1号については、「害する目的」が要件となるため、本件マンションの任意売却

 態様がよほど悪質(極端な廉価で売るなど)でない限り、該当性が認められることはないと

 考えられる。また、4号についても、代価を特に合理性の無い方法で費消するようなことが

 なければ、同様である。

 また、免責不許可事由に該当したとしても、裁量免責(同条2項)の余地はあり、実際にも免

 責されることが多い(*7)。

 したがって、代価を預かって保管するなどの措置を講じていれば、免責不許可になることはな

 いと考える。

                                        以上

 

                    出典先(東京大学法学部卒業・司法修習生A氏)

---------------------------------------------------------------------------------

 *1 財産の相当価格での売却も、債務者の売却の目的・動機が正当であれば詐害性が否定される(大判M44.10.3)。もっとも、売却した代価によって特定の債権者に優先弁済する意図があるときは詐害行為とされる(大判T6.6.7)。ここに言う「不当な目的・動機」とは、売却により特定の債権者を利して他の債権者を害する目的等のことである。

債権者の監視しにくい代価の処分如何で取り消されるかどうかが決まると言うのでは取引安全が害されるという理由で、相当価格による売却が詐害行為となる余地を否定する見解もある。

いずれにせよ、財産の売却行為が詐害行為とされるのは例外的である。

 *2 物上代位(民法372条、304条)により代価についても抵当権の効力が及ぶ可能性もあるが、差押えがなされた場合のみである。この場合は詐害行為の問題は生じず、抵当権者への優先的な弁済が行われるに過ぎない。

 *3 中田裕康『債権総論(新版)』(岩波書店)p.240 相関的判断とは、財産の減少行為の態様(処分に対する有償性の有無)と、その主観的態様(債権者を害する意思があるか、行為態様の認識にとどまるか)を総合して、詐害行為となるかを判断することである。

 *4 弁済は、原則として詐害行為とならない。しかしながら、一債権者と通謀し、他の債権者を害する意思をもって弁済したような場合にのみ例外的に詐害行為となることもある(最判S33.9.26)ため、そのような極端な態様の弁済は避ける必要がある。

 *5 財産を弁済に充てることや費消が禁止されるのは本件マンションの売却代価に限らず、破産者の責任財産(既存の預貯金などを含む)ことに注意すべきである。

 *6 破産法162条1項、2項の条文の規定内容の概略は、

①弁済等の行為が、支払い不能になった後に、支払い不能または停止であることを知った上で(悪意)なされた場合

②弁済等の行為が、破産手続き開始申し立てのあった後に、申し立てがあった事実を知った上で(悪意)なされた場合

③弁済等の行為が、未だ弁済期の到来していない債権に対してなされた物であり、かつそれが支払い不能になる前30日以内に、債権者を害することを知った上で(害意)なされた場合

 のいずれかに当れば、否認権の行使がなされる可能性がある。

なお、財産の親族への処分や、贈与は、「悪意」や「害意」が推定される(同法162条2項)ため、これらの場合に当たると判断される危険性が高いので注意が必要である。

 *7 仙台地裁における免責不許可の割合は、申し立てのあった事件のうち0.16%程度と、非常に少ない。(全国倒産処理弁護士ネットワーク編『破産実務 Q&A200問』p.399も参照)

 

更新情報

更新日:2019.11.01
更新日:2019.10.02
更新日:2019.09.03
更新日:2019.08.01
更新日:2019.07.29

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